弊社の株主提案が可決し、配当性向100%継続する場合に世紀東急株価が到達するとみられる水準
1,800円以上(※)
※配当利回りをベースに試算、計算の詳細は“株主提案について”をご参照下さい。

割安に放置される株価のバリュエーションと資本コストを通じた対話の必要性

世紀東急のROEは税効果により嵩上げされたベースで今期13.9%(実効税率を30%として算定した税引き後経常利益ROEは11.8%)程度となる見込みであり、東証一部の平均よりも高い水準です。翻って世紀東急のPBRをみると、0.78倍となっており、解散価値であるPBR1倍を下回っています(バリュエーションは2019年5月22日現在の値を記載)。

世紀東急の過去5年間のPBRの推移

残余利益バリュエーション(Residual income valuation)理論という評価手法があります。自己資本利益率(以下「ROE」といいます。)や株主資本コストrや利益成長率gなどを用いて株主価値を算定する方法です。

(詳細は最下部を参照)

理論PBRの考え方に基づくと、ROEと利益成長率gが大きくなれば高まり、株主資本コストrが増加すれば低下することとなります。
なお、(ROE-株主資本コスト)はエクイティスプレッドとも呼ばれ、エクイティスプレッドが0よりも大きくなれば理論PBRが1倍を上回ることとなります。

そこで、上記の考え方を用いて世紀東急のPBRが低水準である理由を、考察すると以下の仮説が考えられます。

  • 株主資本コストが高い
    • 現在の自己資本が積み上がる資本政策を採用している限り、将来のROE低下は不可避であり、将来のROE低下を織り込んでバリュエーションは低水準となっている。
    • または、世紀東急は、2015年以降公正取引委員会の立入検査を5回受けており、独禁法違反行為を何度も行っていることが資本コストを増加させている可能性(『世紀東急の独禁法違反について(今後の処分が予定されている案件と再発防止策の評価)』ページ参照)。
  • 利益成長率がマイナス
    • 道路舗装業界全体の需要は底堅く、将来の利益成長が高いとまでは言えないもののマイナスであるとの前提に立つには根拠に乏しい。

したがって、世紀東急のバリュエーションが割安に放置されている理由の1つは、株式市場が将来のROEが株主資本コストを更に下回ることを懸念していることだと考えられます。

また、PBR以外のバリュエーションとして、企業価値(Enterprise Value)の観点からみると、世紀東急のEV/EBITDAは1.7倍となっています。
EV/EBITDAが1.7倍であるということは、現在の株価で世紀東急を買収した際の投資回収期間が約2年間であるということを意味し、割安であることを示しています。
EVとは、企業が株主や債権者から調達した資金を生産設備購入などに投下(以下「投下資本」といいます。)し、将来稼ぐ収益の現在価値を指します。また、投下資本に対してどの程度の収益を確保できたかは、Return on Invested Capital(以下「ROIC」といいます。)で計測されます。このROICが企業に求められるリターンを上回っていれば、投下資本よりもEVは大きくなります。
世紀東急については、EV/EBITDAが小さいということは、投下資本を効率的に活用しなかった結果として、効率的に資産を使って稼ぐ力(ROIC)が、企業に求められるリターン(加重平均資本コスト。(以下「WACC」といいます。))を下回っているということです(※※)。
※※ROIC(投下資本利益率)が加重平均資本コストよりも低くなるほど、企業価値は投下資本よりも小さくなるという考え方を前提としています。

以上のように、資本コストについての考察は投資家も行いますが、一方で、企業が認識している資本コストを知り、対話の土台として活用していくことも重要です。

なお、現在、世紀東急が公表している中期経営計画には、資本コストに関する記述はありません。世紀東急はROE目標として11.7%程度を掲げています。ROEは一定程度の水準といえますが、上記のようにPBRは1倍を下回っていることから、世紀東急の株主資本コストはROEよりも更に高いと考えられます。世紀東急の株価のバリュエーションを高めるための1つの施策としては、高い株主資本コストを下げていくことが挙げられ、“どうすれば株主資本コストを下げることができるのか”といったことについての対話の出発点として、世紀東急が自社の資本コストをどのように考えているか開示することが望まれます。

世紀東急の中期経営計画目標と修正後の目標

(出所:2018年5月10日のプレスリリース

(出所:2019年5月9日のプレスリリース


(ご参考)Residual income valuationについての補足説明
一般的な株式価値の分解式は以下の通りです。

(出所:CFA Institute

上記の等式について、①B_0=B_(t-1)、②RIが1年あたり永久成長率g%で増加及び③ROEが一定、の前提をおきます。
そして、両辺をB_(t-1)で除すると以下のようになります。

上記の等式は理論PBRを示すため、以下のように整理されます。

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