株主の信任を得ることができない社外役員と求められるコーポレートガバナンス改善
世紀東急の筆頭株主は東急建設株式会社(以下「東急建設」といいます。)であり、東急建設の保有比率は22.11%です(2019年3月31現在)。
社外取締役について
世紀東急の社外取締役として、東急建設の会長が就任しています。東急建設会長は2010年から世紀東急の社外取締役として就任しています(就任当時は東急建設社長)。
弊社は、大株主出身の取締役が会社法上の社外取締役の要件を満たしていたとしても、当該取締役には独立性が確保されていないとみなし、社外取締役としての選任議案に反対します。理由は、社外取締役は独立性が備わっているべきであると考えていることです。弊社を含め、多くの機関投資家は会社法上の社外取締役であっても独立性が確保されない場合は、社外取締役として認めていません。社外取締役の役割は、会社から独立した立場から少数株主の利益を代弁することです。大株主出身の取締役は“大株主の利益”の代弁者であり、独立した社外取締役にはなり得ません。
2018年の株主総会においては、飯塚取締役に対する賛成比率は75.54%と非常に低くなりました。これは多くの株主が飯塚取締役を社外取締役として認めなかったことの証左です。
2018年株主総会における取締役に対する賛成比率
(出所:臨時報告書)
社外監査役について
世紀東急の監査役会は、社内の常勤監査役1名と社外監査役3名から構成されています。社外監査役は、次のとおり、3名全員が東急建設関係者です。
- 東急建設土木事業本部に勤務していた東急建設の従業員
- 東急建設常勤監査役
- 東急建設社外監査役
全員の社外監査役が特定の大株主関係者である監査役会は極めて特異であり、世紀東急には独立性のある社外監査役を選任することが期待されます。
なお、2018年株主総会においては、東急建設従業員である監査役の選任議案に対する賛成比率は58.04%と極めて低い水準となり、また、東急建設社外監査役である監査役の選任議案に対する賛成比率は90%を下回りました。
2018年株主総会における監査役の選任議案に対する賛成比率
(出所:臨時報告書、2018年の監査役選任議案では2名の監査役候補だけが諮られた)
独立性が担保されない社外取締役の存在や、同様に独立性に疑問がある東急建設関係者からなる監査役会の存在など、世紀東急のコーポレートガバナンスは好ましいものであるとはいえません。まず、世紀東急ではこれらの取締役会・監査役会の構成を改善していくことがコーポレートガバナンス改善のために重要です。
一方で、以下の通り、コーポレートガバナンスを改善させようとする動きもみられます。これらが機能することが期待されます。
- 譲渡制限付き株式の付与
- 独立社外取締役が過半を占める任意の委員会の設置
(出所:第2四半期決算説明会資料)
なお、2018年7月に付与された譲渡制限株式の処分価格は735円です。2019年3月末現在株価589円とは25%乖離していますが、どうすれば株価が上がるかということについて、世紀東急の取締役会として真剣に考えていただくことを期待いたします。